大腸菌と聞くとO-157を想像する人が多いのではないでしょうか?
O-157は、ニュースで学校や飲食店などにおいて集団感染が報じられて有名になった、人間にとって感染するととても危険な菌です。
しかし、その危険性の割りには、消毒や感染予防は意外とシンプルです。
本記事では、自分でできるO-157の消毒や感染対策について解説します。
難しい話は抜きにして、「これだけは知っておきたい知識」のみを厳選してお伝えいたします。
目次
O-157はとても危険
O-157はとても危険な大腸菌です。
誤解されがちですが、大腸菌は人間や動物の腸内に普通に存在します。そして、そのほとんどが無害です。
しかし、大腸菌の中にはいくつか悪さをする菌がいるのです。
その代表選手がO-157。
O-157は、ベロ毒素というフグ毒の30~50倍と言われる強さの毒を出し、溶結性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こします。
症状が軽い場合は10日程度の下痢、おう吐や発熱程度で済みますが、症状が重くなった場合は、腎臓に障害を残したり、脳症による痙攣や意識障害などを引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。
食中毒というと、あまり命に関わらないとイメージする人もいますが、O-157による食中毒はとても危険な感染症ということを意識しましょう。
特に幼児や高齢の方は注意が必要です。
O-157は〇〇から感染する
O-157は飲食物などを口にして感染するケースがほどんどです。
菌に汚染された飲食物を摂取するか、感染者の糞便で汚染されたものが口に入るなどして感染します。
また、O-157は他の食中毒を引き起こす細菌(100万個~)などと違って、わずか100個程度の少量の菌でも感染するのが特徴です。
とても感染しやすいということですね。
O-157の主な感染源は以下のとおりです。
- 主に牛などの食品
- 感染者のふん便
- 井戸水
O-157の感染源① | 主に牛などの食品
O-157の感染源として有名なのが牛の肉。O-157は牛などの反芻動物が保菌していることが知られています。その糞便に汚染された食肉や、そこからの二次汚染により多くの食品にも菌が移る可能性もあります。
牛レバーの生食が禁止されたのは、このO-157などの腸管出血性大腸菌による食中毒が原因です。厚生労働省が牛レバーに付着している可能性のあるO-157を問題視して、安全性を確保するためにそのように判断したからです。
また農林水産省などで、除菌などO-157を取り除き安全に食することができるかが検討されましたが、完全に除菌・殺菌することは現在の技術では困難なようです。
O-157の感染源② | 感染者の糞便
O-157に感染した人の糞便には、O-157が多く含まれます。
その糞便を処理する過程で、手などに菌が移り、そこから口内に菌が入り込んで感染を引き起こします。
感染者が使用したトイレを掃除する際に、レバーやドアノブなどを介して菌が手に付着して、感染するケースが多いのです。
O-157の感染源③ | 井戸水
井戸水にもO-157が含まれていることがありますので気をつけてください。
掘削深度の浅い井戸では、特に地上部から流れ込む水の影響を受けやすいため、その水質も変化しやすいです。
牛舎や豚舎の近くの井戸から汲み上げた水を使用した集団食中毒の例や、井戸水を飲料水として使っていた幼稚園での痛ましい事件など、井戸水からO-157が検出された事例は数多くあります。
自分でできるO-157の消毒&感染対策5選
O-157は非常に強い毒を出す怖い菌ですが、消毒や感染対策は比較的シンプルです。
基本的には通常の食中毒対策をすれば問題ありません。
以下に消毒&感染対策について解説します。
- 加熱する
- こまめで入念な手洗い
- アルコールや塩素系の消毒薬につける
- 調理器具を都度洗う
- 食品の保存に気をつける
自分でできるO-157の消毒&感染対策① | 加熱する
O-157は加熱により比較的容易に消毒できます。
なぜならO-157は熱に弱く、75℃で1分以上加熱すると死滅するからです。
肉や魚はもちろん、野菜なども熱を加えることで安心して食べることができます。
特に肉料理は、中心部までしっかりと熱を加える意識で調理しましょう。
牛レバ刺しが国によって提供が禁止されたのは、熱を加えないで食べるからです。
自分でできるO-157の消毒&感染対策② | こまめで入念な手洗い
どんな菌やウイルスであれ、感染予防の基本はこまめで入念な手洗い。
調理を始める前、生ものを扱う前後、食事前など、都度手を洗うことは自分でできるもっとも簡単な食中毒対策です。
もちろんO-157の感染対策にも有効です。
自分でできるo-157の消毒&感染対策③ | アルコールや塩素系の消毒薬につける
アルコールや塩素系の消毒薬もO-157を消毒するのに効果があります。
アルコールを手にしっかりと塗りこむ、次亜塩素酸ナトリウムで使用済みの食器やふきんをつける、それによってO-157を死滅させることができます。
次亜塩素酸ナトリウムについて、もう少し詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
次亜塩素酸ナトリウムの希釈液はハイターやブリーチなどで作ることができます。
原液の濃度に併せて水で希釈して作ってください。
<0.01%の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を作る場合>
原液の濃度 | 希釈する倍数 | 原液の量 | 水の量 |
---|---|---|---|
1% | 10倍 | 330ml | 3㍑ |
6% | 60倍 | 50ml | 3㍑ |
12% | 120倍 | 25ml | 3㍑ |
<0.02%の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を作る場合>
原液の濃度 | 希釈する倍数 | 原液の量 | 水の量 |
---|---|---|---|
1% | 50倍 | 60ml | 3㍑ |
6% | 300倍 | 10ml | 3㍑ |
12% | 600倍 | 5ml | 3㍑ |
なお、0.1%の次亜塩素酸ナトリウム消毒液は「便やおう吐が付着した床」、「汚れた衣類などの漬け置き」、0.2%のものは「トイレ周り」、「食器などの漬け置き」に使います。
自分でできるO-157の消毒&感染対策④ | 調理器具を都度洗う
包丁、まな板、トレーなどの調理器具は使ったら都度洗いましょう。
特に肉魚などを扱った場合は忘れずに。
万が一、O-157に汚染された食材を扱った場合でも、調理器具を洗っていれば他の食材に付着するのを防げます。サラダ用の野菜など加熱しない食材を扱うときに特に大事です。
また、初めから調理器具を肉魚用と野菜用などと分けておくのも、都度洗う手間をかけられないという場合に有効な手段です。
自分でできるO-157の消毒&感染対策⑤ | 食品の保存に気をつける
当たり前ですが、食品の保存には気をつけてください。
O-157は10℃以下で増殖が穏やかになり、マイナス15℃以下で増殖が停止します。
冷蔵庫、冷凍庫でO-157菌が死滅することはありませんが、増殖は抑えられるのです。
従って、可能な限り食材を早く冷蔵庫ないし、冷凍庫にしまうようにしましょう。
スーパーで買ってきた食材の放置、冷蔵品を出しっぱなし、使い切らない冷凍品を解凍してまた戻す。こんなことをするとO-157が増殖しやすいです。
ここでもやはり肉魚類に特に注意してください。
まずは自分でできるO-157の消毒・感染対策をしよう
本記事ではO-157に関して、その感染がどのように起こるのか、そしてどうやって消毒・感染対策をするのかについて解説しました。
O-157の毒性は強いですが、その消毒や感染対策は通常の食中毒対策の基本に忠実に行うことで防げます。
とはいえ、人が感染するとリスクの高い菌であることは事実です。
自分だけで消毒・感染対策をするのが不安という方は、専門の業者に相談してみるのが良いかもしれません。